咳や喉の痛み、肘に違和感がある時に
尺沢とは?
【尺沢(しゃくたく)】は、手の太陰肺経に属するツボで、肺経の第5穴にあたります。肺経は、呼吸機能、気の巡り、水分代謝、皮膚や体表の働き、のどや気道の健康などと深く関わる経絡です。
- 尺沢の「尺」は、中国の古い長さの単位(前腕の長さ)を意味します
- 尺沢の「沢」は、水が豊富に集まる泥沼や潤いのある場所を意味します
すなわち、前腕という尺の基準となる場所にあり、肺経のエネルギーが豊かな川のように集まり、潤いをもたらす場所、という意味を持っています。
その尺沢は、肺経の合穴(水穴)であり、肺経の気が深く集まる重要なツボとされていて、咳や痰を和らげる、のどの熱感や痛みをやわらげる、呼吸をしやすくする、ひじ周辺の緊張をゆるめることを目的に用いられることがあります。
そのため、咳、痰がからむ、のどの痛み、息苦しさ、ひじの内側の違和感などのお悩みに活用されることがあります。
また、多くの文献*で、咳の特効穴と記されています。
*漢方概論<経穴編>、はり入門、東洋医学<経穴編>、鍼灸実用経穴学、鍼灸治療基礎学、その他
尺沢の探し方
尺沢は、肘を軽く曲げたときにできる横ジワの上で、中央を走る太い力こぶの腱(上腕二頭筋腱)のすぐ外側(親指側)のくぼみにあります。
- 床に座るか椅子に腰掛け、手のひらを上に向けて肘を軽く曲げます。
- 肘の内側にできる横のシワを確認し、そのシワの中央あたりを触ると、縦に走る硬くて太い力こぶの腱(上腕二頭筋腱)がはっきりと分かります。
- その太い腱の「すぐ外側(親指側)」のふちにある、指先がすっぽりと吸い込まれるような深いくぼみが尺沢です。
*敏感なツボなので、強く押さなくても反応が出ます。痛みではなく、響きを感じるところが正しいポイントです。
「尺沢」は、重要なツボのひとつで、せきが止まらない時に使用したいツボの一つです。
尺沢はこんなお悩みに
尺沢は、次のようなお悩みに用いられることがあります。
- 喉の激しい痛み・腫れ: 扁桃炎や風邪による喉のイガイガ感、熱感、痛みを強力に鎮めます。
- しつこい咳・気管支の不調: 肺の炎症を抑えて痰を切りやすくし、コンコンと続く激しい咳き込みを和らげます。
- 肘の痛み(テニス肘など): パソコン作業やスポーツでの腕の使いすぎによる、肘の外側の痛みを緩和します。
- 手のほてり・寝汗: 体内にこもった余分な熱(虚熱)を冷まし、手のひらの不快なほてりや寝汗を落ち着かせます。
- 五十肩による腕の可動制限: 肩から肘にかけての筋肉の強張りを緩め、腕の曲げ伸ばしや挙上をラクにします。
そのほか、痰がからむ、息苦しさ、発熱時の不快感、ひじの内側の痛み、腕の疲れなどにも使用されることがあります。
特に、「咳が続いて胸が苦しい」「のどが熱っぽく痛む」というときのセルフケアとして取り入れられることがあります。
また、肺経の合穴として、呼吸器だけでなく、ひじ周辺の不調にも用いられることがあります。
*高熱や呼吸困難、血の混じった痰、強い胸の痛みがある場合は、セルフケアではなく速やかに医療機関を受診してください。
尺沢のセルフケア方法
「太い腱のキワにある、非常に気血が豊富で響きやすい場所」なので、“強く揉んだりするのではなく、指の腹で腱の奥へ圧を沈み込ませる”のがポイントです
おすすめのケア方法は次のとおりです。
- 火を使うお灸
- 火を使わないお灸
- パイオネックス(置き鍼)
- ツボ押し
(注意点)
- 火を使うお灸:じんわりとした温熱が「沢」の水を潤すように経絡を満たし、冷えて強張った腱を優しく溶かすようにほぐしてくれます。毎日据えるのがおすすめです
- 火を使わないお灸:腕が慢性的に冷えて肘が突っ張る方や、乾燥で喉を痛めやすい方に最適です。持続的な温熱が経絡を芯から温め、潤いを巡らせてくれます(3時間以上は貼らないこと)
- パイオネックス(置き鍼):小さな持続刺激が、日中のデスクワークによる腕の疲労や、急な咳き込みを未然に防いでくれます(1日以上貼らないこと)
- ツボ押し:反対側の手の親指の腹をツボに当て、残りの4本の指で肘を後ろから包むように支えます。ゆっくり深く押し込み、ゆっくり緩めます。これを数回繰り返すと、喉や胸元がスーッとラクになっていきます
*尺沢のすぐ近くには、橈骨神経や重要な血管が走っています。早く喉の痛みや咳を止めたいからと、力任せに激しく押すと、神経を痛めて手のしびれや痛みが残ったり、大きな内出血を起こしたりして大変危険です。火を使うお灸も肘のシワの周辺は皮膚が比較的柔らかいため、「熱い」と感じたら我慢せずすぐに外してください。あくまで「痛気持ちいい、深く響く」範囲を徹底しましょう
セルフケアで変化が感じられない時は
咳やのどの不調には、風邪や感染症、アレルギー、乾燥、ストレス、喫煙、呼吸器の病気など、さまざまな要因が関係しています。
また、激しい胸痛を伴う咳、息苦しさや唇が紫になる、高熱で水分が飲めないほどの喉の腫れ、肘が急に腫れて熱を持つ場合は重大な疾患の恐れがあります。すぐに呼吸器内科や耳鼻科等を受診してください。
セルフケアを続けても喉の痛みや咳、肘の痛みがすっきり引かない、という時は、無理をせず医師や鍼灸師に相談しましょう。
そのほか、部屋の湿度を保つ、水分をこまめに補給する、十分な睡眠をとる、のどを乾燥させない、禁煙や受動喫煙を避けるといった生活習慣の見直しも大切です。
鍼灸の施術では、手足や首・肩・肩甲骨、腰・骨盤などのツボを使用し、全身調整を行います。
それによって、尺沢の持つ「肺の熱を大元から清め、呼吸器と腕の巡りを復活させる力」が最大限に引き出されるでしょう。
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激しい胸痛を伴う咳、息苦しさや唇が紫になる、高熱で水分が飲めないほどの喉の腫れ、肘が急に腫れて熱を持つ場合は重大な疾患の恐れがあります。すぐに呼吸器内科や耳鼻科等を受診してください。




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